不眠症とかみ合わせ

 誰もが「眠ろうとしてもどうしても眠れない」という不眠経験をお持ちだと思います。明日の行事・イベントが楽しみで、また逆に不安で、眠れないとか、旅行先で枕が変わって…などいろいろ原因はありますが、多くはその時かぎりで、原因が解消すればまた眠れるようになります。不眠症とかみ合わせ
 しかし時としてそういった不眠の症状がよくならず、1か月以上も続く場合があります。
これが日中の生活に影響を及ぼすとき、すなわち、長期間にわたり夜間の不眠が続き、日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する、と認められたとき不眠症と診断されます。
 多くの日本人が不眠症に悩んでいて、調査によれば、5人に1人が「睡眠で休養が取れていない」「何らかの不眠がある」と回答しています。また、加齢とともに不眠の方は増加します。60歳以上の方では約3人に一人が睡眠問題で悩んでいます。

 不眠の原因はストレス・こころやからだの病気・クスリの副作用などさまざまだといわれています。
 そのなかで、お口まわりに関係の深い「かみ合わせ」も原因のひとつになることがあります。
 ひとつは、かみ合わせのズレによる自律神経のバランスが崩れることです。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、ごく簡単に言うと、交感神経が日中働いて活発な活動を促し、逆に副交感神経は夜、からだを回復させ、リラックスさせます。
かみ合わせのズレは、周囲にある神経や筋肉、関節などを常に緊張させ、それがストレスとなって交感神経を持続的に刺激します。この自律神経のバランスの崩れが不眠の原因になることがあります。

 また、かみ合わせが悪いと「食いしばり」「噛みしめ」といったブラキシズムの原因ともなります。ブラキシズムは歯の摩耗、歯周組織の損傷、歯がグラグラになる、被せものが欠けたり、取れたりする、顎関節症などお口まわりに様々な弊害をもたらしますが、首の回りや肩の周りの筋肉にまで波及します。
この負担が長く続くと、肩こりや頭痛に苦しむことに加え、頭の位置や背骨などにズレが生じ、体のゆがみへとつながります。この体のゆがみが睡眠の質を落とす原因となることもあります。

 不眠とかみ合わせの関係は一例にすぎず、お口まわりの器官はからだのさまざまな器官と密接に結びついています。歯科に限らず、定期的な検診などで、自己の状態を知っておくことは大変重要だと考えます。