歯周病の歴史

 これまでこのコラムの中で、「虫歯の歴史」「入れ歯の歴史」「歯みがきの歴史」などの歯にまつわる歴史を取り上げてきましたが、今回は「歯周病」について、遡ってみたいと思います。
歯周病といえば歯石」というくらい両者は深く関係していて、歯石を取り除くことは歯周病予防の最重要ファクターです。
一方で考古学的な観点からみると、歯石は当時の生活について多くのデータをもたらしてくれる貴重な情報源です。
まず、日常生活のなかでも特に食生活に関する多くの情報をもたらしてくれること、使っていた食器や食べものの残骸といった間接的なものでなく、まさに口のなかにあったものであること、を考えればその小さいサンプルの重要度は想像できるでしょう。
前置きが長くなりましたが、本題に入ります。
歯周病がもっとも古い時代に確認された例として、猿人であるアウストラロピテクス(約400万年前~約200万年前に生存していたとされています)の骨があります。火を使い始めた時期(約200万年前~?)と関連があるのではと考えられています。
旧石器時代のネアンデルタール人の歯石や骨にも歯周病の痕跡が見られたそうです(ネアンデルタール人は、50万年前くらいから数万年前ごろまで存在した人類で、ヒト(ホモサピエンス)とは、別系列の旧人類とされているのが現在の定説です。)。
となると、現生人類である我々、ヒト(ホモサピエンス)はその誕生時から歯周病とつきあっていたことが想像されます。
そこから、多くの年月を経た古代エジプト時代(紀元前3000年頃~)では、残されている貴人たちのミイラから歯周病の痕跡が確認されています。身分の高い人に歯周病の症状が多く認められることから、食物に恵まれおいしいものを食べていた人たちが歯周病に悩んでいたようです。
そんな歯周病はギネスブックにも載っています。「全世界で最も患者が多い病気は歯周病である。地球上を見渡しても、この病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない。」
このように長い歴史があり、多くの人を苦しめてきた歯周病ですが、その治療や予防が可能になったのは、その歴史から見ればごく最近です。次回コラムで歯周治療の歴史を見ていきたいと思います。