動画を見ながら、スマートフォンを操作しながら、あるいはテレビを見ながら歯を磨く。
こうした「ながら歯みがき」は、現代では一般的になってきつつあります。
忙しい日常の中で歯みがきの時間を確保しやすく、習慣として続けやすいという面から見れば合理的な方法と言えるでしょう。
一方で、意外と繊細な作業である歯みがきを「ながら」でやっていていいのか!という考えの方もいらっしゃることでしょう。
歯みがきは、歯と歯の間、歯ぐきとの境目、奥歯のかみ合わせなど、汚れが残りやすい場所は決まっており、そこを意識して磨くことが重要です。
しかし、注意が他に向いている「ながら」磨きでは、どうしても手の動きが単調になり、磨きやすい場所ばかりを繰り返し磨いてしまう傾向があります。その結果、「磨いているつもりでも磨き残しがある」という状態になりやすいのです。
じっさい、歯科の研究では「歯みがきは時間よりも質が重要」という考えが大勢を占めています。たとえば、磨き方を見直すだけで、歯垢(プラーク)の除去率に約30%の差が出るという報告もあります。つまり、「どう磨くか」によって結果は大きく変わるのです。
「ながら歯みがき」そのものがすべて悪いわけではありません。前にも述べたように歯みがきの時間を確保するきっかけになるという意味では、一定のメリットもあります。ただし大切なのは、「時間」だけでなく「質」だということです。
短時間でも集中して磨く時間をつくることが、むし歯や歯周病の予防には欠かせません。
例えば、ながら磨きのなかの最初の1, 2分だけは鏡を見ながら丁寧に磨く、仕上げに歯間ブラシやデンタルフロスを使う、など意識を向ける時間を取り入れるだけでも、清掃の質は大きく変わります。
日々の習慣は少しの工夫で変えられます。「ながら」から「意識して磨く時間」へ。ほんの数分の違いが、将来の歯の健康に大きな差を生むかもしれません。