お口のなかを見て診よう。
~小さな気づきが大きな健康~
私たちは健康を考えるとき、食事や運動、睡眠といった生活習慣には敏感でも、意外と見落としがちなのが「お口のなか」です。しかし、歯や歯ぐきの状態は全身の健康と深くつながっており、ちょっとした変化から身体のサインを読み取ることができます。まさに、
お口は健康の入口であり、同時に鏡でもあるのです。

例えば、
歯ぐきが腫れたり出血したりする場合、それは単なる磨き残しだけではなく、
歯周病の兆候である可能性があります。
歯周病は
糖尿病や
心血管疾患とも関連があることが知られ、炎症が続くと全身に影響を及ぼすこともあります。
また、むし歯や口内炎などでよく噛めない状態が続くと、食事内容が偏ったり、消化に負担がかかったりするなど、
身体全体の不調へとつながることもあります。
さらに噛む機能は栄養摂取や消化だけでなく、脳の活性化とも深く関係しています。咀嚼刺激が減少すると、
記憶や認知機能に影響を与えることが指摘されており、高齢期の健康維持において「
噛める口」を保つことはきわめて重要です。
歯の欠損や不良な被せ物による咀嚼不良は、単なる食べづらさ以上の問題を引き起こし得るのです。
さらに、お口のなかには心の状態が表れることもあります。寝ている間の
歯ぎしりや日中の
食いしばりは、ストレスのサインとして現れることが多いものです。
歯の磨耗や顎の疲れは、日々の緊張や無理を知らせてくれる小さなメッセンジャーと言えるでしょう。
とはいえ、健康を守るために特別なことをする必要はありません。
歯磨きを丁寧に行うこと、よく噛んで食べること、そして定期的に歯科検診を受けること。これらの基本的な習慣によって、お口の環境はもちろん、全身の健康にも好循環が生まれます。
忙しい日々のなかでも、鏡の前でお口のなかをそっと観察してみてください。歯ぐきの色、歯の状態、噛みしめた跡など、あなたの身体からのメッセージが隠れているかもしれません。