オーラルフレイル

 前回コラムで、「フレイル」について説明しました。「健康な状態と要介護状態の中間」を意味しており、健康な状態に回復させることができる状態であることをおわかりいただけたと思います。

「フレイル」の兆候は、少し運動機能が落ちてきたとか、物忘れが多くなってきたとか、外出するのが億劫になったといったちょっとした衰えから始まります。
 これらのちょっとした兆候は相互に関連していて、適切な対応をとればまだまだ回復できる状態であると同時に、そのままにしておくと介護が必要になってしまうこともあります。
オーラルフレイル」も口腔機能のささいな衰えのことですが、そこから始まり、「フレイル」にまで、つながってしまうリスクもあると考えられています。
「オーラルフレイル」=口腔機能のささいな衰え、とは具体的にはどのようなことかあげてみると、
 硬いものがかめない、呑み込みにくい、食べこぼしがある、むせやすい、口が乾燥しやすい、滑舌が悪くなった、などとなります。
これらは、舌を含めた口の周囲の筋力の低下や唾液の減少など、口腔機能の衰えで起こります。
 そして例えば、硬いものがかめない -> やわらかいものを好んで食べる -> さらに噛む力が弱くなる -> さらに硬いものを食べなくなる、という悪循環をたどり、やがて栄養が十分に摂れなくなり、心身の機能が低下し「フレイル」につながることもあるのです。
 さらに食べ物が呑み込みにくい場合は、嚥下の力が衰えている可能性があり、誤嚥性肺炎のリスクがあります。
 また、食べこぼしがある、むせやすい、滑舌が悪くなった といった「オーラルフレイル」は、人との会話や食事に消極的になり、「社会性」のフレイルとなっていきます。

「フレイル」が回復可能なように「オーラルフレイル」も予防・回復は可能です。
 まずは、口のなかを清潔に保つ口腔ケアが大切です。むし歯や歯周病を防ぎ、歯を失うリスクも下がりすし、肺炎の予防にもなります。
 唾液をたくさん出すことが大事なことはご存じのとおりです。潤いを保ち、食べものが呑み込みやすくなりますし、お口のなかの洗浄作用もあります。
 筋トレとまではいきませんが、「歌を歌う」「会話をする」「声を出して本や新聞を読む」など日常生活の中で口を十分に使うことも筋力の衰えを防ぎます。
口腔機能を鍛える体操もいろいろ考えられているので、定期健診などで歯科医院に行かれたら紹介してくれるかもしれません。

「オーラルフレイル」の兆候に注意して、早めに対処できれば、より豊かな生活を送ることができるでしょう。